羊さん、あんたすげえよ。
この100年の間に人類がさんざん知恵を凝らして、最新の技術を使って高機能ファブリックを開発してきたけど、結局まだアンタには勝ててねぇんだもん。
いや、勝ててないは言い過ぎですね。
ただ実際、化繊インナー全盛期にはウールのウの字も出さなかった登山ウェアメーカーも、今やこぞってメリノウールのインナー出してますもんね。
もちろん化繊がダメってわけじゃないし、適材適所ってことはわかってます。
ともあれウールは本当に優れた素材だし、私も大好き。
で今回はそのウールを使った衣類の中でも、昔からお気に入りのジャケットについて熱く語っていこうかなと。
FILSON MACKINAW
そう、言わずと知れたフィルソンのマッキーノクルーザージャケットです。
フォレストグリーンのシングルマッキーノとダブルマッキーノ、チャコールグレーのダブルマッキーノ。あとまだブラックのシングルマッキーノがある。アホですね
裏地すらない完全なる羊毛の権化
私はトラディショナルで「古き良きもの」も好きですが、最新の高機能なウェアやギアも好きです。
ただ、性能や快適さを度外視してまで懐古に浸るタイプでもないというか。
そのへんは意外にドライで、トラディショナルやビンテージって古い物=良い物みたいに雑な文脈で語られがちですが、性能が伴わない「ただ古いだけの物」にはさほど興味がないので、いま自分が身に着けている「古い物」は、たいてい現代でも通用する性能のものです。(たぶん)
フィルソンのジャケット(シングルマッキーノ・ダブルマッキーノ)なんかはその代表例かもしれません。
生まれたのは100年以上前ですが、今現在でも十分「高性能なアウター」と言い切れると私は思っています。
まず、こんだけゴツくて高品質なウール100%のジャケットってもう二度と作られないと思うんですよね。
今の世の中で、社運を賭けるレベルの熱意でこんなウールのジャケットなんか作るブランドなんて無いでしょう。作るとしても普通にダウンジャケットとか。
このフィルソンのマッキーノが生まれた当時だって、ダウンもナイロンもない中、ウールが最高の素材だったからそれ使って作ったってだけでしょうからね。
でも100年経った今、ウールは古くて時代遅れの素材なのかっていうと全然そんなことはなくて。
むしろウール良すぎん?
というか、場合によってはダウンよりウールのが優れてるシチュエーションさえあると思ってます。
※何をもって高性能と言うかは当然「シチュエーションによるよね」ってことを言ってます。そこ注意ね。
羊さんのすごさ
保温性は当然ダウンより劣る。タフなアメリカンは極寒の山間地域でも「シングルマッキーノでいけるぜ!」とかレビューしてたりしますが、さすがにそれは言い過ぎだと思う。笑
シングルマッキーノの場合耐風性も乏しい。
じゃあこのウールジャケットの良さ、メリットって何なのか?それは
「快適に着用できる温度域の広さ」
だと私は思ってまして。
ウールってダウンや化繊とかと違って
「暑苦しさ」を感じにくい
んですよね。
ダウンはちょっとでも気温が高くなってくるとすぐ暑苦しさを感じて脱ぎたくなるけど、ウールはそれがめっちゃマイルド。だから一日のうち、朝晩寒くて昼暑い、みたいな気候だとウールは本当に快適。
もちろんこれは私個人の感想に過ぎないっちゃ過ぎないんですが。でも実際、ウール着てて感じる「暖かさ」の質の違いというか、快適さは明らかに違うなと思う。
さっきシングルマッキーノは耐風性が乏しいと書きましたけど、その通気性もこの快適さに繋がってると思うんですよね。
もちろんシビアな登山には向かないでしょうが、野外での作業や厳冬期以外でのキャンプでは、この快適温度域の広さは本当に有難いもので。
ちょっと作業して暑くなってもイチイチ脱がなくていいし、またこれもウールの特性として「濡れても保温性が保たれる」という良さがあるので、防水性も耐風性もないジャケットだけど、案外天候にも強かったりする。当然土砂降りでビシャビシャになるような天候は無理ですが。一度水を吸うと乾きにくいですしね。
「濡れても保温性がある」というウールの特性を熟知しているからか、FILSONのマッキーノはこういうハンドウォーマーポケットを別で設けてるあたりもにくい。
濡れた手を濡れたまま突っこめる。これはシングルマッキーノもダブルマッキーノも共通。
ダブルマッキーノの場合、腕から肩、背中半分にかけて文字通り「ダブル」になってます。二重になっているというよりかはケープ状に生地がかぶさっているというイメージ。
このケープも優れもので、ある意味テントのフライシート的に、雨や雪をこのケープ部分で受け止めてくれるんでその下にまで冷えが伝わりづらい。
マッキーノを買う時の注意点
さて、ここまで読んでちょっとマッキーノが欲しくなっちゃったあなたに一つだけ注意点をお伝えします。
まずフィルソンのマッキーノはデカいです。
マジでデカいんでそこまず注意してください。
それはアメリカサイズだからでしょ? いいえ。他のアメリカブランドと比較しても明らかにデカいです。アメリカのレビューも読み漁ってきましたが、アメリカ人もしっかり「フィルソンはでけえ」って言ってますから笑
これね、自分の考えではフィルソン自身も
最初から「縮む」のを前提に考えてて
それゆえのデカい作りなんじゃないかなと思ってます。(根拠はない)
この「縮み」についてはちょっと重要ポイントなので次項で詳しく。
ちなみにシングルマッキーノは割と身幅細め。これはインナーとして着る場合も想定してのことだと思われる。
一方、ダブルマッキーノは完全にアウター用途なので身幅は太めです。このへんも実寸チェック必須ですね。
※ちょっと前まで「シアトルフィット」という、より細身のモデルもあったので尚更注意。
ウールジャケットの「縮み」について
フィルソンのマッキーノはウール100%です。
それも前述のとおり、裏地すらない純度100%のウール百パーです。なので
洗濯して急に乾かすとかなり縮みます。
フィルソンのウールは一応、製造時に高温で煮沸して密度を高めたものを使ってはいますが、それでもやっぱり乾燥機にかけると縮みます。
そのためサイズ選びにおけるもう一つの注意点として、特に中古をオークション等で買う場合、それが「縮んだ個体」だとタグのサイズ表記はまるでアテにならないってことになります。
マジでワンサイズぐらい平気で縮むので、購入の際はしっかり実寸を確認するようにしましょう。
あと、、
みなさんも薄々勘づいてると思いますが、「あえて」縮みをかけて自分に合ったサイズにする、という荒業も可能っちゃ可能です。
ただこういうのって「みんな黙ってやってるけど何かあっても責任は取らんよ」系の、暗黙の了解的なアレなので詳しくは語りません。みなさん各々でご判断ください。
※私自身はその荒業(水洗い→乾燥機)でジャストサイズ化&生地の目も詰まってより強固になったマッキーノをずっと着てます。というか自分にあうような小さいサイズが無いんで仕方ないっちゃ仕方ない
繰り返しますがメーカーはドライクリーニングオンリーって謳ってますので、すべては自己責任でね。
※野良の独り言
まあ元々がワークウェアという性質を考えても、作業で濡れて焚き火等で乾かす、みたいなことは茶飯事だったはずで。それで多少縮むことも想定してサイズ大きめにしてるんじゃないかな、と個人的には思ってますけどね。あくまで個人的にはね。
あとは裏地をつけてないってのも多分そうだと思う。他のブランド、ペンドルトンなんかのジャケットもウール100%ではありますが、裏地(コットン等)があるんで縮んだ際に裏地が余ってたるむんですよね。フィルソンはそのへんも想定して裏地をつけなかったんじゃないかと。
更に更に、マッキーノは通常よりはるかに高い縫い厚でミシンかけてある、的な話も読んだことがありますが、それも縮みを考慮に入れてのことなんじゃないかな。
なんにせよ「私個人は」縮ませても問題無いと判断してますが、あくまで私個人の意見にすぎませんので鵜吞みにはされぬよう。
年代別の違い
さすがに100年以上も販売されてるモデルということもあって、それぞれの年代で造りや仕様がちょっと違ったりします。
とはいえ自分もそこまでたくさんの個体を見てきたわけではないため、○○年代はこのディティールが違う!などの細かい情報は提供できませんが。
もっとも顕著な違い、かつ重要な違いとしては「厚み」があります。
これもデータが少ないので断言はできないながら、たぶん古い物の方が分厚いです。
自分の持っているマッキーノはどれも古い物なんですが、その中でも割と新しいモデルより、古いモデルの方が顕著にゴツイ。触ってわかるレベル(もちろん縮む前で比較してます)
ダブルマッキーノはそこまで違わないけど、シングルマッキーノは結構違う。
生地もそうだし、なんなら縫い糸も古いやつのが太いような。
結論:マッキーノはいいぞ
重いし、縮むし、年代で仕様違うとか、色んなややこしいことを言ってはきましたが。
それでもフィルソンのマッキーノは一着持ってて損はないと思います。
現行だと7~8万円しちゃうと思うのでそこは流石に躊躇する値段ですが、「今、もし自分が一着もマッキーノ持ってなかったら」と考えたら、ギリお金貯めて買うかも。
だってほら、革ジャン買うってことを考えたら安いじゃん。笑
革ジャンだって世代超えて受け継いでいけるぐらい丈夫で、マッキーノもその意味じゃ同じく我が子に受け継がせられる耐久性はありますからね。
オークションや古着ならその半額程度で買えたりもしますし。